人を上手に叱るには?:何を叱るか
上手に叱るというのは難しい
よく、上司や先輩に叱られて、落ち込みが続く人がおられます。それにしても、人を叱るというのは難しいものです。よくない叱り方をしたら、部下は仕事のやる気をなくしたり、メンタルを害したりするなど、色々な支障が出てきます。あなたと関係がギクシャクするかもしれません。そのために、叱り方というのは、十分工夫しないといけません。叱ることが得な人は、残念ながら少ない印象です。ここでは、「何を叱るか」ということについてお話をします。
叱る時は、相手の人格・価値観や周囲のせいにしない
結論を言うと、叱る時は「相手の行動」を叱ります。「だから君はダメなんだ」等と、相手の人格をおとしめてはいけません。「君はすぐ楽をしようとする」等と、相手の価値観を推測で指摘してもいけません。「相手が悪かったね」と周りのせいにしてもいけません。そうではなく、「君のこの行動が良くなかった」等と、具体的な相手の行動自体を叱ることで、相手の人格を尊重していると示唆しながら、相手の行動を変えることが必要になります。
あくまで私たちが変えられるのは、「相手の行動」だからということもあります。叱ることで相手の人格や価値観を変えられる、と思い上がってはいけません。
叱る対象の帰属は、外的・内的の中間的なものにする
何を叱るかについては、様々なものがあります。これをRotterという社会心理学者が、内的な対象と外的な対象に分けています。
叱る対象で最も内的なものは、その人の存在自体です。相手の内的なものを叱るというのは、その人の存在自体が問題だ、という言い方をするということです。「あなたがいるからこうなった」「あなたがいると、いつも困ったことになる」というのが、これに当たります。こう言われた相手は、確実に傷つきます。意欲をなくし、仕事への積極性もなくなります。いらないことをして叱られないよう、最終的には言われた最低限のことしかしなくなります。
相手の価値観や物事への姿勢も、比較的内的なものです。「いつもさぼろうとしている」「自分のことしか考えていない」等というのが、これにあたります。これも内的要素が強いので、相手は傷つき、やはり仕事に意欲を失くして積極性もなくなります。
それに対し、叱る対象の中で最も外的なものは、その人をとりまく環境です。状況であったり、周りの人であったりです。「それは〇〇さん達がこんなことをしたから、こんな困った事になったんだね」「運が悪かったね」等と、その人のしたまずかったことを、他の人など周りのせいにすることを、原因を「外的に帰属させる」と言います。でもこのように叱る対象を外的に帰属させれば、相手を叱ったことになりません。相手の行動も、変わりません。
実際に望ましいのは、叱る時にこの2種類の中間を取ることです。外的と内的の中間的なものは、その人の行動です。「こういうことをしたから困ったことになった」「右にするものを左にしたから、まずいことになった」等というのが、これにあたります。これが最も望ましい叱り方です。
叱る対象を内的なものに帰属すればするほど、その人自身を否定することになります。逆に比較的外的なものを叱ると、その人の人格よりも遠いものを叱ることになります。内的過ぎれば相手を傷つけて積極性を失わせ、外的過ぎれば相手の行動を変えられません。最も適切なのは、内的すぎず外的すぎない、その人の「行動」に焦点を当てて叱ることです。そうすれば、その人の仕事への積極性を保ちながら、その人の行動を正すことに成功することになります。
例:部下の歩きスマホを注意する
ひとつ例をあげましょう。外で営業回りをしている部下が、路上で歩きスマホをしているところを以前目撃したことがあるとしましょう。その時は、一回注意しておきました。しかし今日、外を歩いていると、やはり同じ部下が以前注意したにもかかわらず、また路上で歩きスマホをしているではありませんか。さあ、どのように注意したらいいでしょうか。
もっとも外的に帰属して注意をするのは、「忙しいんだね」とか「急ぎのメールがあるのかな」等と声をかける方法です。でもこれは、歩きスマホの原因を相手のせいにしていないので、相手が歩きスマホをやめない可能性が高いです。
一方、注意する原因をとことん内的に帰属させて注意すると、こうなります。「何度言われても、言われたことを守る気がないんだね」と、価値観を否定するような言い方です。「君はいつも周りを困らせるね」と相手の人格を否定する言い方もあります。これで確実に相手は傷ついて落ち込みます。悪いことしてるので注意されて当たり前なのですが、それでも傷つきます。今後あなたを避けるようになるかもしれません。仕事の意欲が下がるに留まらず、仕返しに貴方の陰口を言うようになるかもしれません。このように、相手を傷つけて何も良いことはないのです。
ここでは、内的と外的の中間である「相手の行動」に焦点を当てるのが、良い方法です。「歩きスマホをしていると、ぶつかったら危ない」「世間的にも歩きスマホはいけないという風潮が強いので。やめないと何かあった時にまずいことになりかねないだろう」等と、言うのです。
叱る時は「相手の行動」に焦点をあてることを、今日から実践しましょう
このように、外的と内的の中間である「相手の行動」に焦点をあてて相手を注意する、ということが、叱るときの肝になります。相手を傷つけず、相手の積極性を失わせず、相手の行動を変える。それによって部下や後輩には、気分よく正しいやり方で仕事に精を出してもらうことができます。今日からでも使える方法です。ぜひ実践してみてください。
