行動すべきかどうか 迷ったら
1.行動すべきかどうかは、迷うもの
ある事をやりたいけれど、うまくいくかどうかわからない。
そんな悩みを抱えたことはないでしょうか。
習い事を始めたいが、続けられるだろうか。
難しいメールを送ろうとしているが、この書き方で大丈夫だろうか。
謝罪をしたいが、どのような形ですればよいだろうか。
多くの方が、こんなふうに迷った経験があると思います。
そしてかなりの時間をかけて悩んだにもかかわらず、結局行動できなかった、ということはなかったでしょうか。
2.イギリス人、フランス人、スペイン人
どこまで考えて、どんなタイミングで行動すれば最もうまくいくか。
人間は昔から、そんな疑問を持っていました。
こんな言葉があります。
イギリス人は、歩きながら考える
フランス人は、考えた後で走り出す
スペイン人は、走った後で考える
これは、第二次世界大戦前に国際連盟事務局長だったスペインの外交官が書いたとされる言葉で、朝日新聞特派員の笠信太郎氏が自著の中で紹介しています。現実的なイギリス人、思索好きなフランス人、明るく行動的なスペイン人の国民性を面白く表しています。
「考えてから行動する」慎重さと、「行動してから考える」積極性。
現実の生活では、不確実性が高い場合、どちらが役に立つのでしょうか。
それを、現代心理学は教えてくれています。
3.商品開発におけるエビデンス
スタンフォード大学のEisenhardtらは、コンピュータ業界の製品開発を調査しました。そしてフランス人的に「緻密な計画を立ててから実行するモデル」(圧縮モデル)と、イギリス人的に「試作と修正を繰り返すモデル」(経験モデル)を比較しました。すると、フランス人的なやり方は開発を遅らせ、失敗しやすい傾向がありました。一方で、イギリス人的に「行動しながら学ぶ」経験モデルの方が、最終的な開発スピードも質も高いことが示されました(Eisenhardt, K. M., & Tabrizi, B. N. (1995). Accelerating Adaptive Processes: Product Innovation in the Global Computer Industry.)。
つまりこの場合、考えてから行動するより、行動しながら考えて修正していくのがずっとよい、とされたのです。
4.起業におけるエビデンス
これは、商品開発だけでなく、起業の場面でも同じであることを、バージニア大学のインド人Sarasvathyが証明しました。
彼女は、成功している起業家たちを調査し、彼らがフランス人的に将来を予測してから行動するのではなく、今ある手段で何ができるか試してみる、というイギリス人・スペイン人的手法をとっていると明らかにしました。(Sarasvathy, S. D. (2001). What makes entrepreneurs entrepreneurial?)
軍配は、考えてから走り出すフランス人ではなく、歩きながら考えるイギリス人の側に上がりました。
さすがに、考えずに走り出す手法が常によいとは思えませんが、もし失敗しても致命的にならないように、例えば小規模に試みるようにしておけば、大丈夫でしょう。
まずやってみることです。それから考えて、修正を繰り返す。それがベストです。
5.分析麻痺
考えきってからでないと行動できない人を、よく見かけます。10人中9人以上はそんな人のように思えます。
分析に分析を重ねて考え抜き、でも結局結論を確定できず行動できない現象を、「分析麻痺」と言います。「考えてから走り出す」ことは、不確実性が高い状況では「分析麻痺」のため走り出せなくなるのです。
6.分析麻痺から抜け出す方法
でも。
そんな状況から抜け出す方法を、ニューヨーク大学のドイツ人 Gollwitzerが論文にしています。彼は、行動しようとする際は目標を意識するだけでは不十分で、「もし状況Aが起きたら、行動Bをする」という具体的行動ルールを予め決めておくことが、行動の自動化を促すことを示しました。(Gollwitzer, P. M. (1999). Implementation intentions: Strong effects of simple plans.)
これに従って、私は「するかどうか迷ったら、重大事態にならない限り、やってみる」ことにしています。
やってみて失敗したこと(=学んだこと)は数多くありますが、やったことを後悔したことは一度もありません。
7.教訓:行動と思考を繰り返す
上の3つの論文の教訓は、こうです。
行動と思考を 繰り返す
行動し、結果について考え、修正して行動し、またその結果を考える。
そんなハイブリッドなアプローチが、行動科学が教えてくれる、一番成功できる手法です。
要するに、PDCA。
